内保連、外保連、看保連(三保連)共同提言書について
病院経営の現状と令和8年度診療報酬改定に期待する具体的提言
令和7年3月6日
1. 現状の課題
新型コロナウイルス感染症の後も物価高騰の影響により、日本の病院経営は深刻な状況にあります。「第24回医療経済実態調査」(令和5年)によると、一般病院の経常利益率は医療法人平均で3.3%、公立病院平均で-7.1%となり、「2024年度 病院経営定期調査」によると、赤字病院の割合は前年の23.0%から55.4%に急増しました。特定機能病院についても、診療報酬の適正評価や財政的支援の強化が求められており、高度医療の提供を維持するための対策が必要です。この経営悪化により医療提供体制の維持が困難になっている現状があり、国民の医療アクセスに重大な影響を及ぼす懸念があります。
2. 診療報酬改定の重要性
- 診療報酬引き上げと技術への適正評価:物価上昇や人件費増加への対応として、診療報酬の引き上げが必要です。同時に、従来の「もの」偏重の報酬体系から「技術」重視への転換を図り、医師の技術を適切に評価すべきです。これは国民皆保険を守るためにも不可欠です。
- 人的資源の効率的・効果的な配置:医療従事者の不足が深刻化している中、効率的かつ効果的な人員配置の実現が求められます。施設基準の緩和や、専門性の高い看護師の配置を柔軟にすることで、患者に質の高い医療および看護を効率よく提供できる体制を整えることが必要です。
- 病院経営安定化のための財政的支援:地域医療を支える医療機関に対する財政的支援を強化し、地域格差を是正すべきです。また、感染症対応や救急医療といった重要分野に重点的な資源配分を行い、持続可能な医療提供体制を構築することが必要です。
3. 提言の要点
令和8年度診療報酬改定において、以下の解決策を強く要望します。
- 診療報酬の包括的な引き上げを通じて、病院経営を安定化させること。
- 医師の技術や専門性に応じた報酬評価を推進し、技術重視の報酬体系を導入すること。
- 専門性の高い看護師が効率的に働けるよう、専任・専従の枠組みを見直すこと。
- 地域医療を担う医療機関への財政的支援を強化し、地域格差を是正すること。
- 薬の安定供給を図り、円滑な医療提供を確保すること。
- 高額な輸入製品の利用について、財政的な支援を行うこと。
- 感染症対応や救急医療といった重要分野に重点的な資源配分を行い、医療提供体制の持続可能性を確保すること。
本提言は、医師や看護師の技術を適正に評価し、病院経営を立て直すことで、国民全体が質の高い医療を享受できる環境を確保するために必要不可欠なものです。医療はすべての国民に保障されるべき基本的権利であり、これ以上の医療崩壊を防ぐため、提言内容の速やかな実行を強く求めます。
一般社団法人内科系学会社会保険連合 理事長 小林 弘祐
一般社団法人外科系学会社会保険委員会連合 会長 瀬戸 泰之
一般社団法人看護系学会等社会保険連合 代表理事 山田 雅子
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